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防衛省は7月12日、海上自衛隊艦艇部隊での特定秘密漏洩(ろうえい)や内部部局のハラスメント事案などを受けて、自衛隊や同省の幹部ら計218人を処分したと発表した。処分対象者の8割以上を占める海自トップの酒井良海上幕僚長が19日付けで引責辞任する。度重なる不祥事が異例の規模の大量処分に発展した。信頼回復へ防衛省・自衛隊には国民から厳しい視線が注がれる。
木原稔防衛相は記者会見で「国民の信頼を裏切る決してあってはならないもので、深くおわびする」と述べ、給与1カ月分を自主返納すると表明した。
処分を発表した事案は▽特定秘密漏洩▽海自隊員による潜水手当不正受給▽基地内での不正飲食▽内部部局幹部によるパワハラ-の4つ。
指揮監督義務違反などで酒井氏が減給30分の1(1カ月)の懲戒処分、増田和夫防衛事務次官、吉田圭秀統合幕僚長ら幹部5人を訓戒とした。増田氏はパワハラ事案を受けて俸給月額10%(3カ月)を自主返納する。
このほか特定秘密漏洩で海将補以下115人(うち懲戒処分26人)、潜水手当の不正受給で1等海佐以下74人(同65人)、不正飲食で1等海尉以下22人(同22人)を免職や停職、減給などとした。
職員に対し日常的に威圧的な言動を繰り返し、精神的な苦痛を与えたなどとして審議官以上の指定職に就く50代の防衛書記官ら3人を停職や減給の懲戒処分とした。
漏洩を含む特定秘密の不適切な取り扱いは海自艦艇部隊を中心に陸空自などで計58件確認された。いずれも外部への漏洩は確認されていないという。海自護衛艦など38隻で、特定秘密を扱うために必要な適性評価を受けていない隊員計約200人が特定秘密を知り得る状態にあったり、取り扱ったりしていた。
潜水手当は、任務や訓練で潜水した場合、深さに応じて支払われる。潜水訓練の実績を偽り、65人が計4300万円を不正受給していた。基地内で食事代金を支払わず不正に飲食した隊員は22人で、計約160万円の不正額が判明した。
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岸田首相「国民におわび」 自民総裁選対応は考えず
岸田文雄首相は11日夜(日本時間12日午前)、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議など米国訪問の日程を終えて記者団の取材に応じ、特定秘密漏洩(ろうえい)など防衛省で不祥事が相次いでいることに関し「国民にご心配をおかけしていることをおわび申し上げる」と述べた。
首相は12日に関係者の処分を行うと報告を受けていると説明。木原稔防衛相の責任に関しては「強力なリーダーシップを発揮し、防衛省自衛隊の組織の早急な立て直し、防衛体制を万全なものとする。こうしたことに取り組むことによって、国民の信頼回復に全力で当たってもらわなければならない」と述べた。
一方、9月の自民党総裁選への対応を問われ「先送りできない課題、政治改革を含めて内外の課題について全力で今取り組んでいる。こうした課題において結果を出すことに全力を挙げているところであり、それ以外のことは今考えていない」と重ねて語った。